10分のマインドフルネス瞑想が創造性を高める                  竹腰重徳

 多くの企業で、厳しい企業競争に打ち勝つために、個人やチームの創造性発揮が求められていますが、優れたアイデアは、なかなか湧き出てはきません。しかし、それを生み出し易い環境を作ることができます。その一つの方法がマインドフルネス瞑想です。マインドフルネス瞑想は、拡散的思考を使って広い範囲のアイデア創出する、難しい問題に対して辛抱強く取り組む、失敗を恐れず成功を信じて邁進するモチベーション維持など、創造的に思考するスキルを育んでくれます。拡散的思考とは、既知の情報から様々に考えを拡散させ、新たな物を生み出していく思考方法です。

 オランダのエラスムス大学で、Emma Schootsra博士らのチームによって行われた文献調査と独自の実験結果により、短時間のマインドフルネス瞑想が職場での創造性を高めることができることを、実証しました(1)。

 まず彼らは文献調査から始めました。文献調査結果から、多くの企業経営者がストレスに打ち勝つためにマインドフルネス瞑想を取り入れているが、マインドフルネス瞑想は、レジリエンスが高まる、ストレスが低減する、感情をコントロールできるようになる、より前向きな見通しが持てるようになる、反射的な闘争・逃避反応でなく、バランスの取れた思慮深いモードに入る能力、などの仕事の成果にポジティブな影響を与えていることがわかりました。また、Danny Penman著の‘Mindfulness for Creativity’から、「マインドフルネス瞑想は、創造的な問題解決のために必要な3つの必須のスキルを向上させる」ということを学習しました。
・マインドフルネス瞑想は拡散的思考のスイッチを入れる、つまり、瞑想によって新しいアイデアに心が開かれる
・マインドフルネスの実践は、注意力を高めるため、アイデアの斬新さや有用性に気づきやすくなる
・失敗や挫折に直面した場合に必要な勇気やレジリエンスを育む、これはイノベーションのプロセスには失敗や挫折がつきものなので重要である

 そして「マインドフルネス瞑想が短時間で創造性を高めてくれる」ことを検証するために、実験を2件実施しました。
 最初の実験では、129人の学生を次の3つのグループに分けました。
  グループ1.音声ガイドにより、マインドフルネス瞑想を10分間行う
  グループ2.偽の瞑想練習を10分間行う(心を開放して自由に考えよと指示された)
  グループ3.何もせず、すぐにブレーンストーミングをする
「ドローンを使ったビジネスモデルをできるだけ多く考え出す」という課題でブレーンストーミングを3つのグループにさせたところ、マインドフルネス瞑想を行ったグループの多様性が、他のグループより22%高かったそうです。また、短期の瞑想により、心をポジティブでリラックスした状態になり、ネガティブな感覚はあまりなかったことが分かったそうで、不安23%減少、苛立ちは24%減少したそうです。

 2つ目の実験では、さらなる確証を得るため、オランダの大規模研究組織のシニア・イノベーション・マネジャー24名に対して、学生を対象とした実験と同様、12分間瞑想し、続いて「組織の中で壁のより少ない文化を作るにはどうすればよいか」という課題について個別にアイデアを考えたそうです。その後、いくつかのグループに分かれ、アイデアを出してもらったそうです。ほとんどの参加者からは次のような報告があったそうです。
 ・雑念が取り払われた
 ・目の前の作業に集中できた
 ・独創的なアイデアを思いつくことができた
そしてそれを具体的に実現し、よい成果が得られたそうです。

 これらの実験結果から、マインドフルネス瞑想により、10分程度の短い瞑想時間でも、アイデア、意思決定、気分も、すべて向上することが実証されているので、実際にマインドフルネス瞑想を試してほしいと勧めています。
 
参考資料
(1) Emma Schootstra etal.、Can 10 Minutes of Meditation Make You More Creative?、HBR、2017


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