3分間呼吸空間法                              竹腰重徳

 公園のベンチに座って鳥のさえずりを聞いているとき、プロジェクトがうまく完了しほっとしているとき、地平線に沈む夕日をゆったりと眺めているとき、大抵の人は気を張り詰めたりせず、リラックスしています。反対に、100人の前でプレゼンするとき、仕事が予定通り進まないでイライラするとき、誰かに何か気にいらないことをいわれカッとなりそうなときなど、ストレスを感じるときは、手軽に使える3分間呼吸空間法を取り入れてみましょう(1)、(2)。内外に生じる現象に気づき、ストレスに冷静に対処できるようになるでしょう。

 呼吸空間法は、ブリージング・スペース(Breathing Space)と呼ばれ、マインドフルネス瞑想の重要なポイントを約1分ずつ3つのステップに凝縮したものです。呼吸空間法は、座った状態でも立った状態でも行えます。どちらの状態で行う場合でも、背筋を伸ばし、肩の力をぬいて、安定した姿勢をとるようにします。椅子に座る場合は両足を床の上にしっかり置きます。手は太もものうえにおきます。そしてよろしかったら、目を静かに閉じます。

 ステップ1.今あなたの内側に起きていることに気づく
 今の自分の心や身体はどのような状態でしょうか。今どのような思考が頭に浮かんでくるでしょうか。気分はいかがですか。身体にはどのような感覚があるでしょうか。何かを変えようとするのでなく、今生じている思考、感情、感覚がどのようなものであれ、気づいて、ただ受け入れましょう。もし、不安な気持ちがするなと感じたら、不安を感じているなと気づいてやさしく受け入れましょう。

 ステップ2.呼吸だけに注意を向ける
 注意を呼吸に向けます。鼻から息を吸って胸やおなかが膨らみ、息を吐いて胸やおなかがへこみます。一回一回の呼吸に伴って生じる感覚の変化を感じます。もし途中で身体の感覚や過去や未来のことを考えたりして心がさ迷ったら、それに気づき、やさしく静かに、呼吸に注意を戻します。心がさ迷うこと自体は自然なことで悪いことではありません。どんなに大変なときでも、呼吸に注意を向ければ、どんな嵐の中でも錨を下した船が、港に安全に留まれるように、気持ちの嵐に飛ばされることはありません。

 ステップ3.注意を全身の感覚に拡げる
 もう一度、呼吸も含め身体全体に注意の焦点を拡げます。あたかも全身で呼吸をするかのように意識の中心を呼吸から身体全体へと広げていきます。姿勢、表情、皮膚の感覚、身体の中から感じる感覚に注意を向けます。身体のどの部分が、今、緊張しているでしょうか。もし、どこかで不快・緊張・抵抗などネガティブな感覚に気づいたら、イメージしてその部分にゆっくりと深く息を吹き込んでみましょう。そして、そこからゆっくりと息を吐いてみましょう。そんな呼吸を数回してみてください。緊張が和らいだら普通の呼吸に戻り、時間が来たら静かに目をあけましょう。

 呼吸空間法は、ストレスがあるときでも、新たな視野を与えてくれ、物事に落ち着いて対応できるようにしてくれるでしょう。日常活動の中で呼吸空間法がいつでも手軽に使えるよう、朝起きた時とか、仕事が終わったときとか、時間を決めて毎日2回以上定期的な訓練を継続することがおすすめです(1)、(2)。
 
参考資料
(1)マーク・ウィリアムズ、ダニー・ペルマン、自分でできるマインドフルネス、佐藤充洋、大野裕訳、創元社、2020
(2)黒川由紀子、フォーク阿部まり子、高齢者のマインドフルネス認知療法、誠信書房、2018


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