アジャイル/デザイン思考イノベーションプロセス         

 グローバル化と新興国の台頭、少子高齢化の進展、消費の成熟化など、企業を取り巻く環境は大きく変わっている。激しい環境変化の中で、企業が熾烈な競争に勝ち残るためには、イノベーションによる革新的なプロダクト/サービスの創出が求められている。イノベーションとは、新しい顧客価値を生み出すための革新の事業活動のことで、イノベーションを最初に定義した経済学者のシュンペーターによると、「新製品の導入、生産方法の革新、新市場の開拓、新資源の獲得、新たな組織の実現などの生産手段の新たな結合、つまり既にあるものの新しい組合せから、これまでになかったものを新たに作り出すこと」で、社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変革をもたらすものである(1)。

 一般的に、製品・サービスは、企画フェーズで企画され、開発フェーズで開発するというステップを踏む。革新的な製品・サービスを創出するために、企画フェーズで使う手法として、デザイン思考、開発フェーズでは、アジャイル開発が必須のツールとなりつつある。デザイン思考では、企画チームが、顧客の現場に行き、徹底的にリサーチを重ね、顧客がどんなふうに思考し、どう行動するか深層を顧客の本音の部分を掘り下げ、プロトタイプを数多くに作りながら、顧客が真に欲求する革新的な製品・サービスの企画を提供する。企画の内容は開発する製品・サービスのプロダクトビジョン、ビジネスモデル、プロダクトロードマップなども含まれ、開発フェーズのインプットとなる。開発フェーズでは、開発チームがアジャイル手法を使い企画された製品・サービスを開発する。アジャイル手法により、顧客の真のニーズにあったものかどうかを顧客に確認しながら反復漸進的に開発でき、革新的な製品・サービスが提供できる。 

 企画フェーズから開発フェーズまでのプロセスを、デザイン思考とアジャイル開発を統合して使う方法は、デザイン思考とアジャイル開発のマインドセット(人間中心、反復プロセス、徹底的協働、顧客との協調、失敗から学ぶなど)がほぼ同じであることもあり、スムーズに統合でき、迅速に革新的な製品・サービスを創出するのに有効である。

 GEでは、革新的な製品を迅速に事業化するために、リーンスタートアップの考えを入れたFastWorksと呼ばれる経営手法を導入している(2)が、そのプロセスが、まさにアジャイル/デザイン思考イノベーションプロセスである。
 
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参考資料
(1)丹羽清,イノベーション実践論、東京大学出版会、2010年
(2)日経ビジネス、ものづくりの未来を考えるGEの破壊力、日経ビジネス、2014年12月22日号
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