アジャイルERP開発プロジェクト           竹腰重徳

 新年、明けましておめでとうございます。本年もアジャイルプロジェクトマネジメントに関連した情報を投稿させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)とは、企業の持つ人、物、金、情報などの経営資源を統合的に管理・配分し、業務の効率化や経営の全体最適を目指す手法で、統合型業務ソフトウェアパッケージ(ERPパッケージ)を利用して開発される。

 ERPパッケージを利用した開発方法は、あるべき業務要求が、ERPパッケージの持っている機能を利用してどのように実現できるかを分析しながら開発していく。もしあるべき業務要求が、ERPパッケージの機能で実現できない場合は、ERPパッケージの機能に合わせて業務を変更できないか、あるいは、追加機能として開発するかを判断しながら開発していくが、できるだけERPパッケージの持っている機能を適用することが肝要である。ERP開発方法は、あるべき業務要求を満足するERPパッケージの機能を「動くソフトウェア」として動かし、業務要求にあったものかどうかをユーザーに確認を得ながら漸進的に開発していくプロトタイピング手法である。

 ERP開発プロジェクトは、ウォーターフォールによるプロジェクトマネジメント方法が多く実施されてきたが、プロジェクト遅延や予算超過を招くケースも多く発生し、アジャイルによる方法が、それらを解決してくれると脚光を浴びてきている(1)。ERP開発プロジェクトはプロトタイピング手法の開発であり、アジャイルプロジェクトマネジメントの適用は、比較的適用し易いと考えられる。

 筆者は、アジャイルを適用したERP開発による財務会計構築プロジェクトに、プロジェクトマネジャー(PM)として参加した経験がある。開発チームは、現場の財務会計業務を精通した業務担当者とIT担当者で構成された。彼らは、あるべき業務の要求開発を現場に行って収集し、収集された要求機能に対するパッケージの機能の選択、経理部門のユーザーへのプロトタイピングなどの作業を実施した。反復期間1ヶ月に固定した反復サイクルを3回にセットし、優先順位の高い要求機能から順次にユーザーにプロタイピングを行い、ユーザーからのフィードバックにより、ユーザーの要求に合った機能が遅滞なく開発ができた。筆者は、PMとして指示管理型リーダーシップではなく、サーバントリーダーシップを使い、彼らが自律的に推進できるよう進捗上の障害の除去、コーチングなど支援活動に徹した。開発チームは、権限委譲されて自律的に作業を進めることができたので、高いモチベーションを持ち、結果として高い生産性とユーザーニーズを適確に実現した良い品質をもたらした。

 プロジェクトの定例会議体は、毎日の朝礼、週次ミーティング、月次ミーティングを実施した。朝礼では、開発チーム全員が前日の作業結果、当日の作業計画、プロジェクト進捗上の課題やリスクを報告してプロジェクト情報を共有した。週次ミーティングでは、1週間の計画と進捗状況のチェック、課題管理やリスクマネジメントを実施した。月次ミーティングでは、プロジェクトスポンサーである経理担当役員にプロジェクトの進捗を報告し、レビューを受けた。チームコミュニケーションを向上させるため、対話型コミュニケーションを重視し、開発チーム全員が同じ部屋で作業を行える環境を整え、計画、進捗、課題、リスクなどのプロジェクトに関する情報を開発チーム全員が共有できるような仕組みを構築し大変良いチームワークを発揮した。
 
 ERP開発プロジェクトにアジャイルを適用すれば、リスク、品質、生産性などの面でウォーターフォールより有効であると期待できる。もちろん、アジャイル原則(2)を十分理解して適用することが必須である。
                                                                           以上
参考資料
(1)Matt Alderton,Big Delivery in small packages,PM Netwok,PMI,March 2013
(2)アジャイル原則、http://agilemanifesto.org/iso/ja/principles.html、2001

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