アジャイル開発のファシリテーション

 プロジェクトでは、チームメンバーやステークホルダーとの複数メンバーでの多様な会議や打ち合わせが行われます。プロジェクトマネジャー(スクラムマスター)は、そのような場面で、集団の活動を円滑に効果的に進めていく必要があります。その有効な手段の一つがファシリテーションです。

 ファシリテーションという語は、物事を「容易にする」「円滑にする」「促進する」といった意味です。プロジェクトにおいては、ゴールに向け効果的にチーム活動が行われるよう、目標達成プロセスに介入して支援することを指します。これを行う人を「ファシリテーター」と呼びます。チームの様々なミーティングやセッションの場で、円滑なコミュニケーションを促進することが役割です。そのためにメンバーの発するメッセージを理解し、分かりやすく整理して示し、より創造的な議論となるよう、また、各自の発想が広がり、効率よく問題解決や意思決定ができるよう手助けします。具体的には下記のようなファシリテーション活動を通じ、チームの能力をフルに引き出す触媒として働きます。
  ・プロセスデザイン(ニーズ、チーム編成、運営方法、プロセス手順、場の設定)
  ・セッションやミーティングの目的、成果物、参加メンバーの役割の明確化
  ・グループ討議の円滑化
  ・安心で明るく、ポジティブな雰囲気作り
  ・議論の中身には中立の立場
  ・創造的なアイデア創出の促進
  ・全員発言の促進
  ・発言内容の全員理解のための可視化や明確化の支援
  ・問題解決の支援
  ・グループでの意思決定方法のガイド
  ・コンフリクト解決の支援
  ・意思決定事項のチームコミットメントの促進
  ・ミーティングやセッションの進捗管理

ファシリテーターはアジャイルの価値規準である「個人とその相互作用」「顧客との協調」を促進します。
アジャイル開発では、下記のような多くの場面で、ファシリテーションが求められます。
  ・プロジェクトビジョン作成ミーティング
  ・要求収集セッション
  ・リリース計画ミーティング
  ・反復計画ミーティング
  ・ワーキングセッション
  ・デイリースクラム
  ・反復レビューミーティング
  ・反復レトロスペクティブミーティング

 一般的に、ファシリテーションを推進するスキルとしては、次のようなものが要求されます。いずれもスクラムマスターに限らず、プロダクトオーナー、要求アナリスト、開発チームのメンバーも含め、アジャイル開発に携わる人に必要なスキルと言えます。
  ・傾聴(言葉の意味内容だけでなく、アイコンタクト、表情、身振り等の非言語にも注目)
  ・共感(相手の感情や考えを相手立場で理解する)
  ・観察(個々のメンバーの状況や全体の状況、グループ・ダイナミックスの理解)
  ・創造力の促進(メンバーの思いこみや固定概念を打破して気づきを与える)
  ・質問(適切な質問は、内容の理解に加え、相手のアイデアも引き出す)
  ・要約(聞いたことを分かりやすく簡潔にまとめる)
 これらファシリテーションのスキルは実践的スキルです。つまり知識だけでは不十分であり、日常の実践を通じて磨かれます。スクラムマスターや要求アナリストやチームメンバーは、先に挙げたミーティングやセッションの場面を捉えて、ファシリテーター役を積極的に買って出ることです。
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