アジャイルプロダクトビジョン                                    竹腰重徳    

 プロダクトビジョンは、これから開発するプロダクトの実現される将来の状態を描いたもので、プロダクトを実現させる人々に対して首尾一貫した方向性をあたえる。プロダクトビジョンを明確にしてプロジェクトをスタートすることは、開発に参加する人たちにとってプロジェクトの到着地点が明確になるので共通の開発目標を持つことができる。プロダクトビジョンが組織のビジネス戦略に結びついていること確認して、プロダクトビジョンステートメントとしてシンプルに記述する。なお、プロダクトには、市場に売り出すための外部のための商用プロダクトと、組織の日々の仕事をサポートする内部組織のためのプロダクトがある。
 アジャイル(スクラム)では、プロダクトオーナー(PO)が、プロジェクト期間中プロダクトについての責任を持つ。したがってプロダクトビジョンステートメントの作成は、顧客や他のステークホルダーの意見を聞きながらPOが責任をもって作成する。プロダクトビジョンステートメントは、プロジェクト期間をとおして、スクラムマスター、開発チーム、その他のステークホルダーが、プロダクトが何を目標としているかを知る道標となる。
 プロダクトビジョンステートメントは4つのステップで作成できる。

1.プロダクトの目標を明確にする
 プロダクトの目標とは以下のような内容を、デザイン思考手法などを使って探索する。
 ①主要なプロダクトのゴール②プロダクトを使う顧客のニーズや課題
 ③競合分析④優れた点や差別化

2.プロダクトビジョンステートメントの草案を作成する
 プロダクトの目標をベースに、プロダクトビジョンステートメントの草案を簡潔にわかり易くまとめる。
 ①ターゲットの顧客②顧客のニーズ③プロダクトの名称④プロダクトのカテゴリー
 ⑤プロダクトのメリット、買う理由⑥競合⑦優れた点や差別化

3.ビジョンステートメントのレビューをする
 以下のような質問に答えることで内容をレビューする
 ①ビジョンステートメントは明確に分かり易く説得力はあるか
 ②プロダクトがいかに顧客ニーズに合っているか説得力のある記述になっているか
 ③ゴールは達成可能か
 ④組織の戦略やゴールと整合性のある価値を提供できるか
 全ての質問の回答が「はい」になれば、スクラムマスター、開発チーム、プロジェクトステークホルダーなどにもレビューを受け、全ての人が理解できるまで内容を修正する。ただこの段階では、スクラムマスターや開発チームは決定していないかもしれないので、その場合は、レビューはできないので、スクラムチームが結成されてからレビューを受けて、必要なら修正する

4.ビジョンステートメントの作成を完了する
 ビジョンステートメントは、スクラムマスター、開発チーム、その他のプロジェクトステークホルダーにプロジェクト期間中ずっと参照されるので、いつで参照できるように、壁に貼っておくのがよい。価値のある変化に対応することがアジャイルの価値観のひとつであるので、プロジェクトの状況に応じてビジョンステートメントの変更も発生するかもしれないが、その場合は変化に対応して修正をする。
                                                                            以上

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