創造性とマインドフルネス                     竹腰重徳 

  イノベーションとは、創造的なアイデアを、有用性のある製品やサービスとして実現する経済活動のことで、企業が存続を続けるための必須の活動です。企業はイノベーションを継続していくために、個人やチームが創造性を発揮し続ける仕事環境をいかに構築していくかが、厳しい競争に打ち勝つための重要なポイントといえます。「創造性とは、独創性と価値のある何かを作りだすこと」と多くの科学者たちは、定義しています(1)。社会学者、社会心理学者のG. Wallas は‘The Art of Thought ’(1926)の中で、創造性のプロセスは、準備(Preparation) 、孵化(Incubation)、 ひらめき(Illumination)あるいは洞察(Insight)、検証(Verification)の4つの段階を経て、斬新で価値のあるものが出てくると述べており、現在でもこの提言が利用されています(2)。
 継続してマインドフルネス瞑想すると脳の認知能力をあげるなど、脳科学の面から創造性を発揮するのに役に立つことが、書籍やウエブなどの記事に載っていますが、創造性のプロセスの中でどのように役に立つのかあまり具体的な情報を見つけることができませんでした。今回「マインドフルネスを創造性プロセスにどのように適用するか」という記事(2)を見つけ、私たちが創造性を発揮するのにマインドフルネスがいかに役に立つかを知るために取り上げました。
 創造性プロセスの準備段階、孵化段階、ひらめきあるいは洞察段階、検証段階と順を追って説明していきます。
 準備段階では、まず、既知の情報から様々に考えを拡散させ(めぐらせ)、新たな物を生み出していく拡散的思考を使って広い範囲のアイデアが要求されます。マインドフルネスは、拡散的思考を高めることができます。マインドフルネスは、私たちの思考、感情、身体感覚、および周囲の環境で起こった現象に対して瞬間瞬間に気づき、その現象を良いとか悪いとか判断せずに受け入れる(受容)能力を強化してくれます。気づく能力と受容能力により既知の情報から様々に考えを拡散させ(めぐらせ)、新たな物を生み出していく拡散的思考を高め、いろいろなアイデアを創出することができるようになります。ブレーンストーミングやアイデア創出セッションの前に、短い時間のマインドフルネス瞑想をすることにより、心が散漫にならず現在議論している課題に集中して取り組むことができます。
 孵化段階では、準備段階で創出された多くのアイデアが頭にあります。そこで問題や課題を意識的に思考することから離れ、リラックスしたり、休息をします。この段階でのマインドフルネス瞑想は、散漫な思考、不安、ストレスを和らげ、心を休ませることに役立ちます。リラックスし穏やかな状態になれば、ひらめきや洞察が突然出るようになります。
 ひらめきまたは洞察の段階では、解決策や実施策が突然意識に上がってきます。マインドフルネスを訓練すると、私たちは明晰になり、思考内容をよりよく見られるようになり、気づきがおこり、創造的洞察の瞬間が起こります。どのように意識に上がってきたのか、探し求めて見つからなかった解決策や実施案が突然手に入ったため、喜びの強い情動を伴うことが多く、アハ体験といわれています。
 検証段階では、ひらめいた解決策や実施策が実際に問題を解決するのか、目標を達成するのかを確認する作業が行われます。この最後の段階では、集中、プラス思考、失敗を恐れず成功を信じて邁進する意欲が重要です。収束的思考をしながら、既知の情報から論理的に思考や推論を進めていき、アイデアを調整しながら最も斬新で価値のあるものに正しくそして早く到達します。マインドフルネス瞑想による明晰力、集中力、ポジティブ思考の能力向上が検証段階で役立ちます。

参考資料
(1)The standard definition of creativity,2012
http://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10400419.2012.650092
(2)Crystal Goh,How to apply mindfulness to the creative process,Mindful,2016
https://www.mindful.org/apply-mindfulness-creative-process/

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