感謝の瞑想とマインドフルネス                     竹腰重徳 

 私たちは、経験的に感謝の気持ちが幸せに影響していることを実感しています。感謝を伝えれば、伝えた方も伝えられた方も良い気分になれます。ただ、感謝することは、毎日の生活の中でずっと昔から当たり前のことととらえられてきたので、感謝と幸せについての科学的研究は始まったばかりです。この分野の先駆者カルフォルニア大学ディヴィス校エモンズ教授らは、感謝が幸福にどのように関係するかの調査研究を行い、自己誘導的な訓練を通して感謝の気持ちを引き起こせば、心、身体、人間関係のいずれにも良く、幸福感をもたらすという結果を得ています(1)。

 エモンズ教授も参加するカルフォルニア大学バークレー校のGreater Good Science Center(GGSC)によると、さまざまな研究によって、感謝と心理的・感情的・身体的幸福との関係性が科学的に究明されつつありますが、絶えず感謝を実践している人たちは、主に次のような効果があることがわかってきました(2)。
 ・強い免疫システムとストレスの減少
 ・より大きな喜び、楽観、幸福
 ・より強い人間関係とより大きな寛大な行動
 ・孤独や隔離という感情の減少

 また、感謝の実践の脳科学的研究から、明らかになったことは、感謝の実践が、脳の視床下部の高いレベルの活動を促します。視床下部は食欲等の本能行動、体温や血圧の調整、自律神経機能の中枢で新陳代謝やストレスレベルに強い影響を及ぼし、オキシトシンを作りだします。それにより、睡眠の改善、ストレスの減少、痛さの減少、運動量の改善などの効果があります。また脳幹を刺激し、ドーパミンの分泌を促し、内側前頭前皮質にセロトニンの分泌を促します。これにより、他人の視点を理解する、共感する、感情やストレスの解放をします(3)。

 感謝の気持ちを育てる方法のひとつが、感謝に焦点をあてた「感謝の瞑想」です。米国でヴィパッサナー(マインドフルネス)瞑想で著名なジャック・コーンフィールドによると、感謝の瞑想の対象は、人間、動物、植物、昆虫、空、海、空気、水、火、地球、太陽、先祖など私たちが今生きていくうえで恩恵を受けているものすべてが感謝の対象となるのです。感謝の瞑想は、マインドフルネス呼吸瞑想から入ります。静かに座り呼吸を観察し、身体がリラックスしてきたら、心の中でありがとうと感謝を唱えます。

「今この瞬間、呼吸ができ生きていることにありがとうと感謝を唱えます」
「毎日私たちの日常を支えてくれている人々、動物、植物、空気、水、火、地球、太陽などすべてにありがとうと感謝を唱えます。」
「私たちが生まれる前から何千年にもわたって今日を築いてくれた先祖や先輩の活動にありがとうと感謝を唱えます」
「今、安全であること、幸せであること、健康であること、家族や友人いること、コミュニティがあること、学習できることなどに、ありがとうと感謝を唱えます」

 毎日このような感謝の瞑想を継続することによって、何事にも感謝することが心の習慣となり感謝の実践に結びつき、幸せな気持ちになれるのです(4)。

参考資料
(1)Emmons,R.A.,& McCullough、M.E.,Counting blessings versus burdents:An Experimental Investigation of Gratitude and Subjective   Well-Being in Daily Life,Journal of Personality and Social Psychology,2003
(2)https://ggsc.berkeley.edu/what_we_do/major_initiatives/expanding_gratitude/about_project
(3)Alex Korb,The Grateful Brain,Psychology Today,2012
(4)Joaquin,Gratitude meditation:A Simple But Powerful Happiness Intervention,2017

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