怒りを感じたらRAIN 竹腰重徳
日常生活では、さまざまなことが起こり、それに対して強い「怒り」の感情に襲われて、誰かに心ないことを言ってしまったり、衝動的に行動してしまったり、前後の見境がつかなくなることがあります。その結果、自分でも「何であんなことをしたのだろう」と後悔することもあります。怒りは脳科学的にいえば、脳が自分を守るために発動される「緊急モード」で、爬虫類脳といわれる扁桃体が主役です。この原始的な悩は、外部からの過度な刺激を受けると、脳全体を乗っ取って暴走を始めます。これを心理学者ダニエル・ゴールマンは扁桃体ハイジャックと呼びましたが、これが怒りの正体です。ストレス要因によって暴走しはじめた扁桃体ハイジャックから抜け出し、脳の論理的思考を司る前頭前野や海馬を活性化させる必要があります。そのための方法として効果的なのが、RAINです(1)。 RAINは、ヴィパッサナー瞑想教師のミッシェル・マクドナルドが開発したマインドフルネス瞑想の一つの方法です。RAINは「Recognize」「Accept」「Investigate」「Non-Identification」の頭文字を表していて、4つステップでプロセスを実践します(2)。 R:Recognize 認識する(あ、怒りだ) 怒りが生じたら、「自分の中に何が起こっているか」を問いかけます。内面に焦点を向け、何の先入観を持たずに、今どのような考え、感情、感覚が起こっているかをみます。外から見る自分をイメージして、自分の中に怒りが起きていることを認識します。 A:Accept 受け入れる(仕方ないな) 怒りを認識したら、自分の怒りの感情や気持ちを修正したり、回避したりせずに事実をそのまま受け入れます。そのまま受け入れることで気持ちが落ち着いてきます。 I:Investigate 調査する(なぜ怒ったのか) 怒りを認識し受け入れると、「なぜ怒りが起こったのか」真実を知りたいという気持ちが起こり、今経験していることにもっと集中して注意を向けるようになります。今自分の身体や心で何が起こっているか、身体の緊張度合い、呼吸の速さ、心臓の鼓動、顔のほてり、胃の痛み、手の汗などの感覚、感覚の背後にある考えなどを調査し、原因を探るのです。 N:Non-Identification 自分そのものでない(怒りを客観的にみる) 怒りを自分そのものでないと他人事のように考えてみるのです。怒りに巻き込まれているときは、怒りと自分を同一視してしまったように感じるかもしれません。そのため、怒りのままに衝動的に行動してしまうことがあります。しかし、私たちには怒り以外にさまざまな感情があります。私たちは、怒っているとき、喜んでいるとき、悲しんでいるときもあります。怒りの外側から、「自分はいま怒っているね」「こんな原因があるから怒ってしまったのだね」と、怒りを同一視せず、客観的に観察できる存在こそが自分なのです。怒りに対して客観的になることで、現在の怒りに対して冷静に論理的に対応していくことが可能となり、怒りが収まり解決策なども見つかるかもしれません。 RAINを実践できるようになるには、日頃から訓練しておくとよいでしょう。自分で経験した怒りをイメージして、RAINの4つのステップを訓練する方法がありますが、市販されたCDなどを聞きながら訓練することもできます(2)。 参考資料 (1)ジャドソン・ブルワー、あなたの脳は変えられる、監訳久賀谷亭、ダイアモンド社、2018 (2)久賀谷亭、最高の休息法、ダイアモンド社、2017 |
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