プロジェクトマネジメントの5つのC                     竹腰重徳

  急速に進化しているAI、SNSなどのITテクノロジー、自然災害、環境汚染、資源の枯渇、国家間の対立や戦争など、私たちを取り巻くビジネス環境は、目まぐるしく変化し、先の予測が困難な状態を意味するVUCA(変化が激しく、不確実で、複雑で、曖昧)と呼ばれている時代に私たちは生きています。VUCA時代のビジネス環境では、5つのCといわれるプロジェクトマネジメントの原則が、プロジェクトを成功に導くキーとなります。5つのCとは、Complexity:複雑さ、Criticality:重要度、Compliance:コンプライアンス、Culture:文化、Compassion:コンパッションで、これらを念頭においてプロジェクトマネジメントをすると、プロジェクトの成果を大幅に向上することが期待できます(1),(2)。

1.Complexity:複雑さを受け入れる
プロジェクトは複雑であることが多く、その複雑さを理解することが重要です。プロジェクトの複雑さには、プロジェクトを構成するタスクの相互依存性、変化、課題を認識する必要があります。成功するプロジェクトマネージャーは、複雑さを恐れず、問題解決に能力を発揮する機会だと受け入れます。複雑さを受け入れるということは、必要に応じて計画を調整し、潜在的な障害を予測し、不測の事態に備え、将来の悩みを解消します。

2.Criticality:最も重要なタスクを優先する
 全てのプロジェクトコンポーネントが同じように作成されるわけではありません。ミッションクリティカルなものもあれば、補足的なものも存在します。プロジェクトの最も重要なものを特定し、優先順位をつけることです。本当に重要なことに焦点を当てることで、リソースをより効果的に割り当て、プロジェクトをよりよく進めることができます。プロジェクトの進行に合わせて優先順位を再評価しながら実行します。

3.Compliance:規制環境への対応
 常に変化する規制環境を考慮しながらプロジェクトマネジメントしなければなりません。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトが関連法、規制、業界標準に準拠していることを確認する必要があります。プロジェクトがこれらの基準に準拠していることを確実にすれば、法的な問題や評判の低下などのリスクを軽減するだけでなく、ステークホルダー間の信頼を築くことになります。関連する規制や標準を最新の状態に保ち、コンプライアンスを定期的にレビューしながら実行します。

4.Culture:ポジティブな組織文化の醸成
 プロジェクトには、プロセスやツールは大切ですが、個人個人とその人間関係もまた重要です。ポジティブなプロジェクト文化を醸成することがプロジェクトの成功に導きます。ポジティブな組織文化を築くことにより、オープンなコミュニケーション、コラボレーション、イノベーション、プロジェクト目標の共有を促進し、チームの士気向上とより良いプロジェクト成果につながります。

5.Compassion:人間味のあるプロジェクトマネジメント
 コンパッションとは、仏教の慈悲喜捨の「悲」を表す英語表現で、日本語では「思いやり」や「慈悲」と訳されていますが、「他者の苦しみを救済するこころ」という意味で、他者の困難や苦しみに対し、ただ共感するだけでなく、さらに支援まで実践することです。コンパッションは、課題が発生した他のメンバーに対して耳を傾け共感し人間味あふれる態度で接して、課題解決を支援します。コンパッションのあるアプローチにより、メンバーのモチベーション、帰属意識、生産性が向上します。

 プロジェクトマネジメントの困難さや課題をうまく実践するために、プロジェクトマネージャーはプロジェクトマネジメントの5Cに貴重な指針を見出すことができます。プロジェクトの複雑さを受入れ、重要な活動を優先し、組織文化を尊重し、人間味のあるプロジェクトマネメントは、プロジェクトを成功に導き、組織に利益をもたらすことができます。

参考資料
(1) The 5C’s of project management 2024
https://www.prioritymanagementdesign.com/post/the-5-c-s-of-project-management、
(2) What are the 5 C’s of project management? 2024
https://get.mem.ai/blog/5c-of-project-management
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