マインドフルネス瞑想の心構え                           竹腰重徳 

 マインドフルネスの普及に最も貢献し、この分野の第一人者のマサチューセッツ大学医学大学院教授のカバットジンは、「マインドフルネスとは、独自の方法で注意を払うことです。意図的に、その瞬間に、判断をせずに。このように注意を払うことにより、今この瞬間に存在する現実に対し、より大きな気づき、明晰さ、受容が育まれます。私たちの人生が、その一瞬、一瞬にのみ展開しているのだという事実に気づくことができます」と述べています(1)。これは、マインドフルネスが、「今ここ」に注意を向けている状態であり、自分やまわりの人たちからの評価、判断、好き嫌いといった気持ちにとらわれず、自分の今の思考や行動を観察し、受け入れている状態です。私たちは、マインドフルネス瞑想を継続して実践すると、集中力や明晰な思考を持つこと、創造性を育むこと、誰に対しても思いやりの気持ちになることが実現可能となるのです。瞑想とは、何か特定のことを感じるものではありません。瞑想とは、感じているとおりに感じるというものです。心を空っぽにしたり、まったく動かないようにするものではありません。何よりも瞑想とは、心がそのままでいることを許し、この瞬間どうなっているかを認識することです。その一瞬一瞬に完全に存在する以外の目的を持たず、現在が一瞬ごとに展開していく様子に注目し、何も評価せず、「これがそのものなんだ」ということを認識することです。カバットジンは、マインドフルネス瞑想するときの重要な心構えとして、「評価しない」「忍耐強い」「初心者の心」「むやみに努力しない」「自分を信じる」「受け入れる」「とらわれない」、をすすめています(2)。

・「自分で評価しない」
私たちは、物事を偏見のない第三者の目で見て客観的に評価する必要がありますが、いままでの習慣から自分の好き嫌いで物事を評価し、機械的にしか反応できないようになっています。物事が発生した時に、そのことにすぐ反応したりせずに、起こったことに気づき、どんなことが起こるか成り行きを冷静に観察する能力が必要です。

・「忍耐強い」
 自分の呼吸の流れに注意を向けながら、ときどき何か他のことをしたくなったり、他のことを考えたり、今起こっていることを変えたいと、気がまぎれていくことがあります。自分を失わず、我慢強く呼吸を観察し続けることが重要です。

・「初心の心」
 私たちは、自分自身が何でも知っていると思い込んでいるために、今起こっている事柄の本当の姿が見えなくなっています。今という瞬間の豊かさを感じるためには、あらゆる事柄を、先入観にとらわれることなく初めて見たとき同じように興味を持って受け止める姿勢で、子供のように初心を忘れないで観察することです。

・「むやみに努力をしない」
 何が起きていようと、起きていることすべてに注意を集中し、ただ観察するのです。瞑想中は何かの目的を達成しようと結果を急いでむやみに努力しようとしないで、瞬間瞬間の事柄に注意を集中し受け入れることです。

・「自分を信じる」
 自分以外の物から学び取ろうという姿勢は大事ですが、最終的に、自分の人生の瞬間瞬間を生きるのは、自分自身です。したがって自分自身や自分の感じ方を信じるという姿勢で実践に臨むことです。

・「受け入れる」
すすんで物事をあるがままに見ることです。あるがままに見る態度を身につけることによって、どんなことが起こってもうまく対応できるようになるのです。瞑想は、心に浮かんでくることがどんなことであろうとも受け入れ批判しない態度を培うのです。

・「とらわれない」
狭いモノの見方、利己的な希望や願いにつかまることで、自分自身がとらわれ、自分自身につまずいています。静寂、洞察そして英知は、私たちがいかなるものも求めず、執着せず、拒絶することなく、この瞬間に完璧でいる状態に落ち着くことができるときのみ、湧き出てきます。

参考資料
(1) ジョン・カバットジン、毎日の生活でできる瞑想、田中麻理他訳、星和書店、2012
(2) ジョン・カバットジン、マインドフルネスストレス低減法、春木豊訳、北大路書房、2007

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