マインドワンダリングとマインドフルネス                     竹腰重徳 

 マインドワンダリング(Mind Wandering)とは、心が、「今この瞬間」に起こっていることに注意を向けないで、目の前の課題とは全く関係のないことを考えて、さまよう状態のことです。書類を読んでいる間、ふと昨日の悪い出来事が思い出し、あれこれと思いを巡らせてしまい、気がつけばずっと同じところを眺めていたということはありませんか。驚くことに、このようなマインドワンダリングに時間が費やされている時間は1日の約50%にもなるそうです(1)。

 「今この瞬間」だけに意識を集中することが、いかに難しいかが分かるかと思います。良いことを思い出すのはもちろん明日にとってプラスですが、モヤモヤと思い出し、嫌な気分になってしまうような場合は、自分でストレスを作っている状況です。多くの場合、人がふと思い出すのは、適切な物事の振り返りではなく、その時の自分のマイナスの出来事や感情を思い出してしまうのです。
 例えば、職場で上司に叱られたことを思い出しては、「あんな怒り方をしなくてもいいじゃないか」といったその時の感情を思い出しては、あたかも今目の前で怒られているかのように落ち込んでしまうといった感じです。思い出している「今この瞬間」は、実際には叱られていません。それなのに、建設的な今後への対応に思いを巡らせるのではなく、その時の感情に飲み込まれ、今の感情まで乱されてしまうのは、適切な思い出し方とは言えません。過去に囚われるだけではなく、未来にも意識が向き、「明日もまた怒られたらどうしよう」と、まだ起こってないことで、あれこれ心配をしてしまい、ますます今の気持ちを落ち込ませてしまいます。こうなると、今起こっていることではない過去と未来に心が囚われ、マイナスの感情から抜け出せなくなり、「心ここにあらず」の状態になってしまいます。

 そこでマインドワンダリングによる雑念に気づき、評価も判断もせずに受け入れ、とにかく意識を「今この瞬間」に戻して、その雑念を手放すことが必要です。そのためには、マインドフルネスのトレーニングにより「心を今ここに集中させる」習慣を身につけるのです。このトレーニングは、呼吸に注意を向ける->雑念がわく->それに気づく->雑念を判断や評価せずに手放す->呼吸に注意を向ける・・・の繰り返しです。雑念の発生に気づき、今現在に起こっていること(自分の呼吸)に意識を向けるのです。これを毎日15分~30分位を習慣化することにより、マインドワンダリングよる脳の負の暴走を止めることができるようになります。

 過去の出来事は、もう消せません。未来の出来事は、まだ実際に起こってもないことです。具体的行動の対策ではなく、感情に振りまわされそうになれば、そのことに気づき、良い悪いは評価せず、「今この瞬間」に意識を戻し、脳の暴走を自分で止めるのです。そうすると「今の瞬間」に集中できるようになり、ストレスが減少し、創造性も増してきます。このことは脳科学的に実証されています。筆者も毎日30分のマインドフルネスのトレーニングを続けていますが、最近は負のマインドワンダリングが減少していることを実感するようになりました。                     
参考資料
(1)NHKスペシャルキラーストレス、2016年6月19日放送分


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