1分間STOP.瞑想                            竹腰重徳

  やらなければならない仕事がたくさん抱え忙しいとき、私たちの心は、自動操縦モード(「今、ここ」での現実から心が遊離して、うわの空となっている状態)になることが多く、今の瞬間に集中できず、無意識のうちに過去の経験や未来の不安の妄想にはまり込んで身動きがとれなくなるということが起こります。忙しいときこそ、一瞬立ち止まる時間を作り、マインドフルネス瞑想の一種であるSTOP瞑想の実践がおすすめです。STOP瞑想は、手軽に実践でき、今何が起こっているかを気づかせ、新たな視野や最適な選択肢に導いてくれ、物事に冷静に対応できるようにしてくれます。

 STOP瞑想のS.T.O.P.は4つの頭字語で、下記のような4つのステップで実践します(1)。
 S:Stop(止める)
  文字通り現在行っていること、考えていることを一旦止めて、今の身体の感覚、感情、思考、感情に注意を向けます。今、身体にどんな感覚が生じていますか、どのような考えが頭に浮かんでいますか、気分はどうですか、などに注意を向けます。こうすることで、心が自動操縦モードから今の状況を見つめるモードに変わります。
 T:Take a Breath(呼吸をする)
  次にやさしくゆっくりと呼吸に注意を向けます。息を吸って胸やおなかが膨らみ、息を吐いて胸やおなかがへこみます。一回一回呼吸に伴って生じる感覚の変化を感じます。呼吸はどんな状況でも注意を今ここに向ける錨のような役割を果たし、心を今ここに向けて気づきと平静な状態にしてくれます。
 O:Observe(気づく)
  次に、自分の身体感覚や思考や感情にどんなことが起こっているかの気づきを呼吸から広げていきます。身体感覚では、心臓がドキドキする、肩に力が入る、手に汗をかく、胃が重い、などが感じられるもしれません。思考では、過去失敗したという思いが出てくるかもしれません。感情では、不安、イライラ、不満などが感じられるかもしれません。私たちは自動操縦モードで行動することが多く、今実際に起こっていることに気づかず、見逃しやすいのです。実際の起きていることに気づけば、今の自分にとって、どんな選択肢があるかを落ち着いて考えることができるようになります。
 P:Proceed(進む)
  今何が必要かを問いかけながら次に進みます。そのまま続ける場合もあるかもしれないし、別の選択肢をとるかもしれません。習慣的、性急に反応するのでなく、自分にとって最適なアクションを選択し、冷静に次へと進むことができます。

 日常活動でSTOP瞑想をいつでも手軽に実践できるようになるために、毎日1日3回以上時間を決めて定期的に継続的に訓練を行うとよいでしょう。また、日常生活のシーンで、シャワーを浴びるとき、歯を磨くとき、食事をするとき、歩くときなど、自動操縦モードで行動していると思ったら、STOPを思い出し、STOP瞑想を実践するとよいでしょう。STOP瞑想の実践回数が増えれば増えるだけ、今ここでの気づきの能力が向上しますし、物事に習慣的、性急に反応するのではなく、落ち着いて冷静に対応できるようになります。


参考文献
(1)Palouse Mindfulness、STOP(One-Minute Breathing Space)
  https://palousemindfulness.com/docs/STOP.pdf
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