OODAループとマインドフルネス 竹腰重徳
OODAループは、外の世界で起こっている目まぐるしい環境変化に即応して、自らの方向性(進むべき道)を迅速に変化させる能力が、競争優位に導くことができるというタイムベース競争戦略です。この競争戦略は米軍パイロットで軍事戦略家ジョン・ボイドが提唱した手法で軍事のみならず、ビジネス分野でも大変注目されています。彼は空中戦において、どのような状況にあっても敵機を撃墜できた対応行動を科学的に分析・解明した結果、4段階の対応行動を敵機より迅速に行っていることを見出しました。これがOODAループで、Observe(観察)、Orient(情勢判断)、Decide(意思決定)、ACT(行動)の4つの頭文字とって名付けられました。 Observe(観察) OODAループは、観察から始まります。自分自身を取り巻く外部環境状況、自分自身の状況について情報をより多く収集します。その際、視点の偏りや先入観なしに、客観的なデータを集めることが重要です。 Orient(情勢判断) Orientという言葉には、「方向づける」といった意味があります。収集した情報から過去の経験や認知力や創造力を駆使して状況を分析・評価し、今後に向けた方向づけをします。厳しい環境下で、迅速に冷静に認知機能を働かせて情勢判断することが求められます。ジョン・ボイドはこのプロセスを「Big O(ビッグ・オー)」と呼び、特に重視しています。 Decide(意思決定) 方向性が明確になったら、それに基づいてアクションプランを決定します。 Act(行動) 決定したアクションプランを行動に移します。しかし、OODAループはここで終わりではありません。実行した結果としてどのようになったかを、素早く観察し情勢判断をし、成功するまでOODAループのプロセスを繰り返します。 OODAループは、各プロセスを可能な限り効果的で迅速に移動することで、戦いの主導権を握ることにつながり、勝利を得ることになります。OODAループの各プロセスを有効的に活用するには、それを実践する人々の創造性や知性や士気など直観的能力(直観的に何をすべきか知り実行する能力)を駆使する必要があります。直観的能力は、日常の地道な訓練によって、強化できます。マインドフルネス訓練は、その一つとして大変役に立ちます。 マインドフルネス訓練では、今この瞬間に、呼吸を始めとして身体感覚や外部の対象物に注意を向け、一定の距離をもって観察する訓練を繰り返すことで、気づきの能力と集中力が向上します。この訓練より不確実な状況下のプレッシャのある中でも、思考の歪や感情の嵐から離れて観察し、冷静に客観的に対応できるようになります。するとこれまで気が付かなかったリスクやプラスの要素も把握できるようになり、より合理的、創造的判断ができるようになります。脳の実行機能は、人が社会的、自立的、創造的な活動を行うのに非常に必要な機能とされていますが、認知機能の中の最上位に位置しており、意思決定に指令的な役割を果たします。マインドフルネスの訓練により、実行機能が向上し、自分をコントロールする機能向上、ワーキングメモリーの能力向上、認知的柔軟性の向上を図ることができ、複雑な課題を遂行して目標を達成する実行力が向上します。ジョン・ボイドは、マインドフルネスに影響を与えた禅を学んでいました。 参考資料 (1)チェット・リチャーズ、OODA LOOP(ウーダループ)、原田勉(訳・解説)、東洋経済、2019 (2)竹腰重徳、実行機能を高めるマインドフルネス、PMAJオンラインジャーナル、2022 https://www.pmaj.or.jp/online/2203/message7.html |
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