感謝の習慣                                   竹腰重徳

 カルフォルニア大学ディヴィス校エモンズ教授らは、感謝が幸福にどのように関係するかの研究を行っていますが、感謝することは、心、身体、人間関係のいずれにも効果があり、幸福感をもたらすということです(1)。脳科学的には、感謝することで、セロトニン、ドーパミン、エンドルフィン、オキシトシンなど、脳と体にいい作用を与える脳内物質が分泌されることがわかっています(2)。
 セロトニンは、心のバランスを整える作用があるホルモンで、感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関わっています。
 ドーパミンは、心地よい、気持ちがよい、この先いいことがあると感じると出てくるホルモンで、やる気や幸福感を生み出してくれます。
 エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれるホルモンで、鎮痛効果や気分の高揚・幸福感などが得られます。
 オキシトシンは、他者を優しくしたり、思いやると分泌されるホルモンで、温かく幸せな気持ちになります。また、ストレスを抑えたり、自律神経を整えたり、血糖値や血圧をコントロールしたり、免疫力アップなどの効果があります。

 感謝することが習慣となり何事にも「ありがとう」といえるようになると、次のような効果があります(1)。
 ・よい健康をもたらす
  感謝をすることが、その人の満足度を高め、やる気や活力などに影響し、肉体の病気も少なく、ストレス低減、睡眠の改善、免疫力の改善など心身ともにより健康的になります。
 ・人間関係がうまくいく
  誰かに感謝する場合や誰かから感謝される場合、自分だけでなく相手にも満足感や幸福感の感情が生まれ、継続した良い人間関係を築けます。
 ・生産性が高くなる
  感謝が脳内物質を分泌することにより、やる気や活力が活性化します。感謝が身についた社員は、モチベーションが高く、より効果的、効率的、責任感のある行動を取ります。感謝の文化のある職場は、チームの結びつきを強め、よいチームワークを発揮します。チームの成果を上げるために、自分の仕事の範囲にこだわらず、意欲的に他の仕事にも取り組み、チームを助けます。

 感謝には効果がたくさんありますが、気恥ずかしくて素直に「ありがとう」と表現できない人も多くいます。日常生活の中で何事にも「ありがとう」と感謝のことばが素直に言えるような習慣を身につければ、たびたび感謝の効果を享受でき満足感や幸福感がえられます。

 何事にも容易に感謝できるようにする訓練には、「感謝の瞑想」(3)を実践する、毎日のうれしかったことや感謝したことを記録していく、感謝したい人に訪問して感謝を伝える、などの方法があります。その中で筆者は以下に述べるような「感謝の瞑想」を、毎日時間を見つけて実践しています。この実践により、何にでも素直に「ありがとう」と感謝を表現する習慣がつきつつあり、「ありがとう」といった後の心地よい気持を感じています。
 「今この瞬間、呼吸ができ生きていることに『ありがとう』と感謝を心に唱えます」
 「今毎日私たちの日常を支えてくれている人々、動物、植物、空気、水、火、土、地球、太陽、宇宙などすべてに『ありがとう』と感謝を心に唱えます。」
 「今私たちが生まれる前から何千年にもわたって今日を築いてくれた先祖や先輩の活動に『ありがとう』と感謝を心に唱えます」
 「今、安全であること、幸せであること、健康であること、家族や友人といること、コミュニティがあること、学習できること、便利な生活ができることなどに『ありがとう』と感謝を心に唱えます」

(1)Emmons,R.A.,& McCullough、M.E.,Counting blessings versus burdents:An Experimental Investigation of Gratitude and Subjective Well-Being in Daily Life,Journal of Personality and Social Psychology,2003
(2)Madhuleena Chowdhury、The Neuroscience of Gratitude and How It Affects Anxiety & Grief、PositivePsychology.com、2019
(3)Jack Kornfield、Meditation on Gratitude and Joy

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