プロジェクト・ファシリテーション
アジャイル・マニュフェストの4つの中核的価値「個人とその相互作用」、「動くソフトウェアの提供」、「顧客とのコラボレーション」、「変化への対応」のうち、「個人とその相互作用」(チーム・コラボレーション)と「顧客とのコラボレーション」は、アジャイル開発において、コラボレーションが非常に重要であることを示している。アジャイル開発の専門家であるJean
TabakaやSally Elatteは、アジャイル開発におけるコラボレーションを促進するヒューマン・スキルとしては、ファシリテーションとサーバント・リーダーシップであると述べている。(1),(2) 今回、アジャイル開発におけるファシリテーションについて述べる。(1),(3),(4)
ファシリテーションという語は、(物事を)「容易にする」、「円滑にする」、「促進する」ことを意味するが、プロジェクトにおいては、チームの目標を達成するために、チーム活動が効果的に行われるよう、目標達成プロセスに介入してチームを支援することである。具体的にはプロジェクト・マネジャーは、ファシリテーターとして、下記に述べるようなファシリテーション活動を通じて、チームの能力をフルに引き出し、チーム目標を達成する触媒としての役割を果たす。 ・プロセス・デザイン(ニーズ、チーム編成、運営方法、プロセス手順、場の設定) ・セッションやミーティングの目的、成果物、参加メンバーの役割の明確化 ・グループ討議の円滑化 ・安心、明るい、ポジティブな雰囲気作り ・議論の中身には中立の立場 ・創造的なアイデア創出の促進 ・全員発言の促進 ・発言内容の全員理解のための可視化や明確化を支援 ・問題解決のための支援 ・グループでの意思決定方法のガイド ・コンフリクト解決支援 ・意思決定事項のチームコミットメントの促進 ・ミーティングやセッションの進捗管理 アジャイル開発において、ファシリテーション活動を実施する場面(ミーティングやセッション)は、次のようなものがある。(1) ・プロジェクト・チャーター・ミーティング ・プロダクト・リリース計画・ミーティング ・反復計画・ミーティング ・デイリー・スタンドアップ・ミーティング ・ワーキング・セッション(要求事項、デザイン) ・反復レビュー・ミーティング ・反復レトロスペクティブ(振り返り) ファシリテーターは、ミーティングやセッションをはじめとするチーム内のさまざまなコミュニケーションの中で、お互いが意見を出し易く、またお互いが意見を正しく理解し合い、円滑にコミュニケーションできるようにする役割がある。そのためメンバーの発するメッセージを理解し、分かりやすく整理して示し、より創造的な議論となるよう各自の発想を広げる促進をしたり、効率よく問題解決や意思決定を行えるよう手助けをしたりする。したがって、ファシリテーターとしての必要なスキルは、次のようなものがあげられる。 ・傾聴スキル(言語内容だけでなく、アイコンタクト、熱意、表情、身振りなど非言語も注目して聴く) ・共感スキル(相手の感情や考えを相手立場で理解する) ・観察スキル(個々のメンバーの状況や全体の状況、グループ・ダイナミックスの理解) ・創造力促進スキル(メンバーの思いこみや固定概念を打破して気づきを与える) ・質問スキル(適切に質問することにより、内容の理解や相手のさらなるアイデアを引き出したりすることができる) ・要約スキル(聞いたことを分かりやすく簡潔のまとめることができる) プロジェクト・マネジャーが、プロジェクトにおいて効果的にファシリテーションを実施することにより、チームとして次のような効果を導くことができる。 ・問題が全員共通理解される。 ・問題解決のための多くの創造的なアイデアが出される。 ・チーム内に発生する誤解やコンフリクトが解決される。 ・全員が合意する意思決定を効率よく行う。 ・チームが意思決定事項に関するコミットメントをする。 ・問題解決能力が向上する。 ・高いパフォーマンスをあげる自己組織的チームになる。 なお、ファシリテーションは、アジャイル開発だけでなく、ウォーターフォール型開発においても同様に大変重要なヒューマン・スキルである。 以上 参考資料 (1)Collaboration Explained,Jean Tabaka,Addison Wesley,2006 (2)Why Failing Early in Agile is a Good Thing!,Sally Elatte,PMI Congress 2010 (3)Facilitating with ease!,Ingrid Bens,Jossy-Bass,2000 (4)The Facilitaror’s Fieldbook,David W. Jamieson, AMACOM,1999 問題解決ファシリテーション技法研修 質問その他ご要望事項のある方はお問い合わせください。 |
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